レンズ拭き

某修道会のシスターから依頼されていた件で、今日時間ができたのでようやく対応に伺えた。

依頼内容は単純で、あるシスターの使っている端末で CD ドライブが使えなくなってしまったので何とかしてほしい、というものだった。昨日の夕方、近所の家電量販店で湿式のレンズクリーナーを購入し、机の奥の方から代替フロンのブロワーを引っ張り出し、カバンに詰めて、午前中に修道院に伺った。

CD / DVD のレンズクリーナーというのを使われた経験のない方もおられるかもしれないが、モノとしては単純な代物で、 CD の記録面に小さなブラシが付いている。このブラシで読取用のレンズを掃いて、読取エラーの原因になるレンズの汚れを除去するわけだ。

CD / DVD のピックアップレンズには、ガラスのものとプラスチックのものがあるのだが、一部のものを除いて現在はほとんどがプラスチックを用いている。光学系を単純にするために非球面レンズを使い、なおかつ研磨の工数を減らすためには、プレスで大量生産が容易なプラスチックを用いる方が圧倒的に有利だからだけど、プラスチックということは、ガラスにましてレンズの取扱いには注意する必要があるわけだ。光学ドライブの説明書に必ず「レンズには絶対に触れないように。拭くのもダメ」と書かれているのは、こういうことも関係している。

しかし、たとえどれ程注意して使っていたとしても、汚れるときには汚れる。そしてこういうときには、どうしてもレンズを物理的に拭ってやる必要が生ずる。この際の摩擦の影響を最小限に抑えるために、通常光学ドライブのレンズクリーナーは、クリーニングのための液体を使わない、いわゆる乾式のものが「普段の」メンテナンスでは推奨されるのだけど、時々これではどうしようもない状況になることがある。そういうときは、今回のように、湿式のクリーナーを用いなければならない。それも、一度や二度では回復せず、リピートをかけて何度も繰り返さなければならないこともある。

今回のケースはまさにそれだった。Windows Media Player をリピート再生モードにして、何度も何度も再生を繰り返してから、その辺にあった CDROM を突っ込んでみると……よしよし、読めるようになりましたね。シスター達に回復した状況を確認してもらい、乾式のクリーナーを購入してもらうようにコメントして、今日の作業は終了である。

丁度昼食の時間で、食べていって下さいな、ということだったので、有り難くカレーライスをご馳走になる。近所に住み着いている猫の話などをしながら食事をいただき、食後に後片付けをしてから、帰途についた。

ふと、嫌なことを思い出した。僕の所属教会にも何人かいるのだが、司祭やシスターと親しくしていることをやっかむ人、というのがいるのだ。たとえば、今回のようなことがそういう類の人の耳に入ると、「Thomas さんだけそんなことで修道院に親しげに出入りするなんてズルい」とか言うのだそうな。ズルい? 何が? どうもそういう人達は、自分が聖職者(厳密に言うとシスターは聖職者ではないのだが)と親しくなることで徳が高くなるとでも勘違いしているのかもしれないが、そういうことを考えている人、そういうことが垣間見える人とは、聖職者の方から距離を取るものである。何故って、そんなまやかしの権威を、どこでどう振り回されるか分かったものではないし、そのような権威の濫用に対して責任を負うことなどできないからである。

僕が修道院で PC のメンテや芝刈りをしたり、過越の食卓に乗るラムチョップを焼いたりしているからといって、僕が修道会の権威や徳など纏えるはずがない。そりゃ、広い意味での奉仕をしているわけだけど、別に修道会でも、宗教色の全くない老人介護施設みたいなところでも、その行為に関わる徳には何の違いもない。たまたま僕が、その修道会の人達と面識があって、先方が頼みやすく、僕が引き受けやすいポイントがあった、というだけのことだし、僕が自分で入っているわけでも何でもないんだから、僕にはあの修道会に関わる事々を「纏う」資格など何もないのだ。それを僕が分かっているから、あちらとしても僕にこういうことを頼みやすいのだろう。

聖職者と近しくあることで、まるでその威光を我が物のように勘違いしている手合いを見ると、小学校のいじめっ子が、好きな子のことを「アイツは俺のことが気になってるんだよ」とか吹聴しているのと同じように見えてならない。アンタらがやっているのは、その好きな子に目を向けてもらいたいがために、意地悪をしたり、その子が嫌がるようなことをあちらこちらで吹聴したりするのと、何も違いがない低次元な行為ではないか。そんなアンタらのせいで、その子にどんな迷惑がかかっているか。どんな嫌な思いをさせているのか。そういうことを考えられない時点で、ある意味終わっているようなものなのだけどねえ。ああ、下らねえ。やってることも、やってる奴もね。

2013/01/07(Mon) 23:39:29 | コンピュータ&インターネット
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Profile

T.T.Ueda
Tamotsu Thomas UEDA

茨城県水戸市生まれ。

横山大観がかつて学んだ小学校から、旧水戸城址にある中学、高校と進学。この頃から音楽を趣味とするようになる。大学は、学部→修士→博士の各課程に在籍し、某省傘下の研究所に就職、その2ヵ月後に学位を授与される(こういう経緯ですが最終学歴は博士課程「修了」です)。職場の隣の小学校で起こった惨劇は未だに心に深く傷を残している。

その後某自動車関連会社の研究法人で国の研究プロジェクトに参画、プロジェクト終了後は数年の彷徨を経て、某所で教育関連業務に従事。

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