スペアミントに野良ミント

ミントで煎れたハーブティーが好きなので、今年はミントを植えることにした。

ミントにはいくつか種類があるが、食用としてスーパーなどで売られているのはおそらくスペアミントが一番多いと思う。しかし、スペアミントにはl-メントールが含まれていない。l-メントールが含まれているものとしてはペパーミントと、あまりメジャーではないがニホンハッカが代表的なものである。

ミントは、種子から育てることもできるのだが、株毎の風味の差があることから、交雑していない確かな株から株分けする方が良いとされている。そこで、まずはミントの苗を探したのだが、売っているのは皆そこそこの値段がする。うーん……と考え、ますはスペアミントを入手することにする。場所は近所のスーパーで、いわゆる水耕栽培で作られたと思しき、茎が何本か入って100円とか200円とかで売っているような、ああいうものを買ってきた。穂先を摘み取って小さな瓶に水を入れたものに挿しておくと、数日で根が出てきたので、それを植木鉢に挿してスペアミントは準備完了である。

しかし、このスペアミント、どうにもひ弱なのである。うーん……と少し考えてから、ハイポネックスを買ってきて、2000倍に希釈したものを水代わりにやってみると、案の定、細長くなっていた葉が丸みを帯び、株全体ががっちりとしてきた。うーむ。やはりひ弱だ。まあしかし、しばらくはこのまま育てることにしよう。

さて、問題はペパーミントである。苗を園芸店に見に行ったら、思わずツッコミを入れたくなる程に高価だったので、種子を購入し、鉢に撒いてしばらく様子をみていたのだが、一向に発芽の兆候がない。うーん……では、あそこに行ってみることにしようか。

「あそこ」って何よ、と言われそうだけど、僕の自宅から歩いてほんの2、3分のところにある、角地の一般住宅である。この家に行くと、周囲に雑草がずーっと生えている。ガレージ扉のレールに沿って、そして塀に沿ってそれは生えていて、角の電柱の根本にもそれが生えている。

前の職場に通うときに、この家の前を毎日通っていたのだが、ある日、ふと気になった僕は、その電柱の根本に生えている雑草の葉を取って指で揉んでみたのだ……おいおい、これ、ペパーミントじゃないか!

おそらく、このお宅では庭にミントを栽培していたことがあるのだろうと思う。日本人の食生活の中で、ミントを使う機会はそうそう多くないから、園芸やハーブ栽培に凝っている人でも、しばらくするとミントの栽培をやめる人が多いものだ。しかし……そういう人達は、このときになって初めて気付くのである。ペパーミントの繁殖力の強さに。

ペパーミントは多年草で、しかも地面に沿って茎を伸ばし、その茎伝いにどんどん繁茂していく。この茎を除去しても、播種された種子は次の年の春には芽を出すから、もう使わないのに、ミントがあって困るんだよ……みたいな話はよくあるのだ。僕が某産総研に居たときも、臨時職員の女性に山のようにミントを貰っていたことがあった。その女性は僕によくこう言っていた:「もう、引き取っていただけるんなら、一切合切ミントを持って行ってほしい位ですよ」

自宅の近所のこのお宅も、おそらくはそういう状態なのだろうと思う。交雑している可能性があるので二の足を踏んでいたのだが、苗は高いし種子は発芽しないし、となれば、ここのミントを頂戴しない手はない。僕はガレージのレール沿いに生えている株から、穂先を2つ程頂戴した。帰宅してから、これをスペアミントのときと同じように水には挿さず、そのまま鉢の土に立てた。さて、どうなりますか。

数日後。このペパーミント(以下「野良ミント」と称す)の青々としていること!その影で、こっそりと、種子から発芽したペパーミントの双葉がいくつか顔を出していた。さあ、どうしようか。野良ミントを抜くのは今のうちなのかもしれないが、とにかくこの野良ミントの繁殖力は折り紙付きだし、葉を指で揉んでみると香りは非常にいいのである(通常、交雑しているとこの芳香がちゃんと出なくなることが多い)。とりあえず、後で間引きしなければならないだろうけれど、このまま育ててみることにしよう。

かくして、この夏は、ミントを使いたい放題になることがほぼ決定である。ミントティーにミントジュレップ、あと肉を煮込むときの隠し味にも使える。まあ、処置に困るような事態になると困るけれど、新鮮なミントが手に入るというのは悪いことではあるまい。これからのシーズンが楽しみである。

2011/04/22(Fri) 16:10:07 | 日記
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Profile

T.T.Ueda
Tamotsu Thomas UEDA

茨城県水戸市生まれ。

横山大観がかつて学んだ小学校から、旧水戸城址にある中学、高校と進学。この頃から音楽を趣味とするようになる。大学は、学部→修士→博士の各課程に在籍し、某省傘下の研究所に就職、その2ヵ月後に学位を授与される(こういう経緯ですが最終学歴は博士課程「修了」です)。職場の隣の小学校で起こった惨劇は未だに心に深く傷を残している。

その後某自動車関連会社の研究法人で国の研究プロジェクトに参画、プロジェクト終了後は数年の彷徨を経て、某所で教育関連業務に従事。

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