pdfx.sty

僕自身は、自分で直接印刷所に入稿する、ということを最近していない(したことあるか、って? そりゃありますよ。学位論文のときはねえ……思い出すだけでもブルーになるわ)のだけど、よく言われるのは、「PDF/X で入稿する方がいいよ」ということである。

PDF/X は、特に印刷原稿を扱う用途で策定された PDF のサブセットである。PDF/X にもいくつかのサブセットがあるわけだけど、総じて、

  • フォントは埋め込む
  • 色は CMYK(PDF/X-3 では ICC 付きの RGB も使えるらしい)
  • 動画等は使用不可
のように、扱われる過程でのずれが生じないように配慮されている。詳細は アンテナハウスのドキュメントにまとめられているようなので、そちらを御参照いただきたい。

さて、この PDF/X を僕等が作るときにどうしているか、というと、

  1. 文中に貼り込む画像等は全て CMYK 形式にしておく
  2. LaTeX での色使用では xcolor 等を用いて、これも CMYK 形式で色指定をしておく
  3. フォントを埋め込んだ PDF、もしくは PostScript ファイルを作成
  4. Adobe Acrobat や Adobe Acrobat Distiller, Ghostscript 等で PDX/X に変換
という手順で PDF/X ファイルを作成することが多い。

ただし、この方法だと、PS = PDF 間の変換時に 、本来なら PDF に書かれている筈の hyperref.sty メタ情報が削られてしまうことがある。

これに関しては、処理を PostScript ベースで行い、W32TeX で有名な角藤氏が公開されている bkmk2uni を併用することでメタデータの書き込まれた PostScript ファイルを作成して変換する方法や、pdftk のフロントエンドである pdfmeta.pl で後から追加する方法がある(詳細は横浜国立大学の前田氏の解説を御参照のこと)。

実は、pdfx.sty というマクロがある。このマクロを使うと、PDF/X-1a と PDF/A-1b のファイルを生成することができるのだが、このマクロ自体が pdfLaTeX との併用を前提としているので、そのままでは日本語が使えない……ということで、存在だけは知っていたのだが、今迄使ったことがなかった。

しかし、今はちょっと前とは事情が違う。LuaTeX-ja があるからだ。まだ、pLaTeX を駆逐するまでには至っていないけれど、LuaTeX / LuaLaTeX 上で日本語を扱う試みは、既に現在進行中である。そして LuaTeX / LuaLaTeX こそは、pdfTeX / pdfLaTeX の後継と目されているシステムなのだ。それならば、pdfx.sty を LuaTeX-ja と併用したら、日本語の PDF/X ファイルをダイレクトに作成することができるのではないか。

ということで試したら、これが呆気なく成功するのである。具体的なファイルの引用はしないけれど、"Generating PDF/A compliant PDFs from pdftex" と、『LuaTeX-ja の使い方』 4.1.1 フォントの指定 を参考にしつつファイルを作成して LuaLaTeX で処理すると……日本語フォントが埋め込まれた PDF/X ファイルを作成することが可能なようだ。興味のある方は "Generating PDF/A compliant PDFs..." で公開されている:

http://support.river-valley.com/wiki/images/3/3f/Pdfa-supp.zip
を雛形として試していただければ、作成できることはすぐに確認できると思う……ただし、Windows では確認していないのと、LuaTeX-ja のページに書かれている xunicode.sty へのパッチ (現時点では、このパッチは luatexja/src/patches/lltjp-xunicode.sty に記述されている)が必要なことに注意していただきたい。しかし、こうなってくると、LuaTeX-ja が俄然楽しみになってくる、というものである。

2012/01/26(Thu) 13:43:32 | コンピュータ&インターネット
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T.T.Ueda
Tamotsu Thomas UEDA

茨城県水戸市生まれ。

横山大観がかつて学んだ小学校から、旧水戸城址にある中学、高校と進学。この頃から音楽を趣味とするようになる。大学は、学部→修士→博士の各課程に在籍し、某省傘下の研究所に就職、その2ヵ月後に学位を授与される(こういう経緯ですが最終学歴は博士課程「修了」です)。職場の隣の小学校で起こった惨劇は未だに心に深く傷を残している。

その後某自動車関連会社の研究法人で国の研究プロジェクトに参画、プロジェクト終了後は数年の彷徨を経て、某所で教育関連業務に従事。

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