激安眼鏡店のからくり

この何年か使っている眼鏡のレンズはプラスチック製なのだけど、これにかなり傷が入っている。おまけにここ最近、コーティングの剥離が気になってきて、ちゃんとしたものを買うまでのつなぎに、と、今日某所の激安眼鏡店なるところに行ったのだった。

この店は、まずフレームを選び、伝票記入、視力測定を行った後、30分程で出来上がりの眼鏡を渡すのが売りの店である。僕もまずフレームを選び、一応視力の確認をしたが、レンズの度数の変更はしなくても済みそうであった。

「当店では非球面レンズのバランスの良いところを使用しております」

と、自信満々の店員に、

「そのレンズなんですけど……」
「はい」
「プラスチックですか?」
「はい、当店ではプラスチックレンズをお薦めしておりますが……」

僕は諸々の事情から、レンズに傷を生じ易いものを色々扱わなければならない。今使っているレンズのこともあるので、プラスチックレンズは避けたい、と思っていたので、

「レンズはガラスにしたいのですが……」

と言うと、「はぁ?」と聞き返された。店員、机の下の方からレンズのデータシートを引っ張り出してあれこれチェックし出して……

「……三週間程お時間を頂くことになってしまうのですが」

と言う。はぁ? と、こちらが聞き返したいのを抑えつつ、まあ今使っているのがあるんで、待てないこともないんですがね……と言うと、この店員、

「あの、お客様は今迄ガラスのレンズをお使いになられたことはおありですか」

と、剣呑な顔で聞いてくる。はいありますが? と返事をすると、

「……少々調べさせていただきたいので、そちらにかけてお待ち下さい」

と、店内の椅子を指差される。はいはい……と、数分待つと、別の店員が僕を呼び、再び「三週間程……」の件を聞かされるが、僕はもう待つことに決めていたので、その旨伝えてから、

「……別途費用とかかかるんですかね」

と聞くと、いいえそのようなことはございませんが……と、まるで珍種の生物でも見るような目で見られながら、料金を払い、店を後にしたのだった。

要するに、こういうことなのだろう。この店では、プラスチックレンズだけを店頭で扱う。そうすれば、フレームに合わせる加工等を極めて速く行うことができる。だから客数を捌くことができて、単価を下げることができる……で、そういう店の経営構造において、僕のようにガラスレンズを希望する客は、まさに珍種の生物のような存在であって、店の勝手を理解せずに面倒なことを要求してくる、そういう客だということなのだろう。

三月上旬、僕があの店に行ったときに、店員にどういう風に扱われるのかが楽しみだ。ひょっとしたら、ガラスレンズにろくな在庫がなくて、牛乳ビンの底みたいな代物を押し付けられるかもしれないが……まあ、そういうことはないですよね。僕もそう思いたいのですが。

2012/02/18(Sat) 23:37:38 | 日記
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Profile

T.T.Ueda
Tamotsu Thomas UEDA

茨城県水戸市生まれ。

横山大観がかつて学んだ小学校から、旧水戸城址にある中学、高校と進学。この頃から音楽を趣味とするようになる。大学は、学部→修士→博士の各課程に在籍し、某省傘下の研究所に就職、その2ヵ月後に学位を授与される(こういう経緯ですが最終学歴は博士課程「修了」です)。職場の隣の小学校で起こった惨劇は未だに心に深く傷を残している。

その後某自動車関連会社の研究法人で国の研究プロジェクトに参画、プロジェクト終了後は数年の彷徨を経て、某所で教育関連業務に従事。

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