4月第4週


更新 1996/04/28(01:00)

Index

4月21日(日)   4月22日(月)   4月23日(火)
4月24日(水)   4月25日(木)   4月26日(金)
4月27日(土)

4月27日(土)


 今日は日本橋にファンを買いに行くはずだったのですが、朝が無茶苦茶 辛くて、うだうだしているうちに行きそびれてしまいました。明日行かないと いけないな……

 明日は映画を観に行こうかな、と考えているところです。いま関西で上映されて いる映画というと……えーと……

 こういうときは「ぴあ」と、普段は決まっているのですが、今回買った情報誌は 『KANSAI WALKER』というやつでして……関東の皆さん、こんな雑誌があるんですよ。
 しかし……面白そうな映画が少ないな……「ロスト・チルドレン」か、それとも 「どんな時も」か。うーむ、「クロッカーズ」と「KILLER 第一級殺人」も選択の 余地があるかな。おお、エマニュエル・ベアールの出ている「愛の地獄」も やってるのか。うううううう。千里中央で「ショーガール」もあるか……

 とりあえず、明日レヴューを書きます。今日はひとまず寝ようっと。


Yesterday   Tomorrow    Index


4月26日(金)


 今日もいつもと同じく忙しい一日でした。おまけに今日の大阪は暑くって、 なんともたまらない一日で……

 最近、実験で使っている炉が黒鉛(簡単に言うと炭のようなものです)で できていて、メンテナンスや実験の準備をしていると手が真っ黒になります。 炉の中にセットする小物(治具……じぐ……といいます)も、黒鉛の塊から 切り出したり削りだしたりするのですが、その度に手や顔が煤のような粉で 黒くなってしまいます。この前も、留学生のルクサンドラさんに、

「上田さん、顔のここが黒くなってるわよ」

なんて言われるし……
 今日のこの暑さで、おまけにいつものように手が真っ黒、顔も煤気ている 状況で、家に帰ったら一っ風呂浴びて、冷たいビールをぐびぐびぐびぐび…… (結局これか)なんて、いいですねぇ。でも、日記を書くだけじゃなくて、 シミュレーションの準備をしたり、論文を読んだり……院生の仕事はまだまだ 続くのでした……しくしく。  そうそう、もう一つやらなければならないことがあったんだっけ。僕の いつも使っている端末の CPU ファンが最近不調で、時々止まってしまう、 という恐ろしい状況です。明日日本橋に行って買ってこないと……


Yesterday   Tomorrow    Index


4月25日(木)


 昨日、実験の準備をして帰ろうというときに、友人Oのところでビール をご馳走になりました。あまりおいしかったので、もう1本、もう1本、 と、気がついたら3本も飲んでいました。
 で、彼の車に乗って(そんな歌詞の歌がありましたが……古いなぁ)、 中華料理屋に晩ご飯を食べに行って、その帰り道でコンビニに寄ったので、 ついついワインなんかを1本買ってしまったのです……いや、先日行った パスタ屋で飲んだハウスワインがうまかったもんで、それを思い出して、 ついつい……

 家に帰ってからそのワインを飲むと……安いワインにしてはまぁまぁだった のもあって、ついつい酒が進んで……で、今日は宿酔いでよれよれの状態で 大学にやってきました。

 実験が終わって一休みしていると、教授がやってきました。うちの教授は 行動派で、自ら体を動かしてひょいひょいと仕事を片付けていくタイプなの ですが、僕の机を見るなり……

「上田君、ちらかっとるなぁ」
「そ……そうですねぇ」
「上田君……私、前から思っとったんだがな……」

怒られるなぁ、と思いつつ神妙な面持ちでいると、

「上田君……私、前から思っとったんだがな……ここに棚を置こう」

と、僕の机の向かい側を指して言うのです。で、すたすたと部屋の外に歩き だしました。ついて行くと、一階の荷物置場になっている部屋に着きました。

「えーっとなぁ……これこれ。ここに棚があるんや」
「あ、じゃぁあとで修士の子に手伝ってもらって……」
「いやいや、今、二人で運ぼう」

と、ひょいっと片方を持ち上げるのです。いやぁ、なんだか恐縮してしまい ました……で、運び終わると、

「そうそう、本棚もあるんや。運ぼう」

で、また二人で両側を持って……なんだか、自分のボスにそんなことをさせて しまっている自分が情けなかったなぁ。

 今度からは、論文の山を築くのはやめよう、と、堅く心に誓った僕でした。


Yesterday   Tomorrow    Index


4月24日(水)


 今日はすでにアルコールが入っています……へへへ。横ではM1の子達が 名簿の入力をしています。そう、今日は新しい4年生が来たのです。
 僕は昭和45年生まれですから、今年の4年生とは……最大で、そう、 4つ違うことになりますねー。これってもはやジェネレーション・ギャップ ですよ。
 今日見た印象では、皆「就職活動しやすい研究室」ということでうちの研究室 を志望してきたみたいで、院への進学を希望しているのは8人中1人、という 状況で……淋しい限りですね。別に、やりたいことがあるんだったら就職する のはいっこうに構わないけど、今日の顔合せでも皆おとなしい限りだったし…… ま、これからどんな顔を見せてくれるか、楽しみですね。


Yesterday   Tomorrow    Index


4月23日(火)


 世間は就職シーズンで、うちの研究室でもM2の子達がガイダンスを控えて ばたばたしています。僕はそういう「就職戦線」からドロップアウトした方 なので、「大変だなぁ」と思いつつ、ぼんやりと見ています。
 僕のいる学科は旧称「冶金(やきん)工学科」というところなので、金属 関連に就職する人が従来は多かったのですが、このところの「鉄冷え」という やつで他の業界への指向が強くなっています。
 ところが、そんな中でもやはり「俺は鉄をやるんだ」という子もいるもので、 僕の研究室のT君もその一人です。

「上田さん、僕ね、現場志望なんですよ。もー、出世して、やりますよ、僕ぁ」

 ところが、鉄鋼メーカーの現場勤務はキツイのでそりゃぁ有名なのです。 知人でも、週に十数時間しか睡眠が取れない、とかいうのが何人もいるくらい ですから。で、こんな話をすると、

「えー、そうなんですかー?」

と言いつつも、ちゃくちゃくとそういうことを向かえ打つ心の準備を固めている ようなのです。すごいですよねー。

 僕の場合、自分のやりたいことがあって、それを追い求めて行くために今の 進路を選んだのですが、普通の人はこうやって普通に就職して、厳しい日本の 会社に普通に順応していくのですね……不思議ですよね、日本人って。
 そんな中で将棋の駒のようになっていってしまうのかと思うと、結構そうでも なくて……例えば、某電器会社に就職した僕の学部時代の同級生のK君(今、 うちの研究室と共同研究をするためにここに来ているのですが)なんて、学生 の頃は結構遊んでいたのに、今は自分の行動のスケジュールをきっちり立てて、 実験をし、結果を見据え、問題を考え……もはや立派な、いっぱしの研究者に なっています。

 ますますもって、不思議ですよねー、日本人って。


Yesterday   Tomorrow    Index


4月22日(月)


 今日は実験であわただしい一日でした。二つの炉をいっぺんに使って、 片方では明日の実験の準備をしながら、もうひとつの炉で実験をこなし、 あっちとこっちを行ったりきたりしながら夜になってしまいました。

 最近、こういう毎日が続くようになって、昼食を食べるタイミングを逸する ことが多くて困っています。ついつい四時頃まで何も口にしないまま過ごして しまって、実験の合間にあわててサンドイッチなんかをコーヒーで流し込んで いる自分が、なんとも情けないなぁ、と思う今日この頃です。ああ、誰か僕に 心のこもったお弁当なんて作ってくれないかしらん?

 さて、与太話はこれくらいにして……昨日、タワーレコード云々という話 が出てきていたので、大阪のタワーレコードについてちょっと書きます。
 大阪のタワーレコードというと、ミナミ(大阪市の真中辺り)と梅田(大阪 市の北の方にある交通の要所)がいまのところはメジャーです。僕の場合、 家が大阪市から北の方にあるので、梅田の方が近いわけで、ちょくちょくここ に出かけています。
 場所は、JR大阪駅のちょっと先にある大阪マルビル(東京のとはちょっと 違います。東京のは「丸の内ビル」でマルビル、大阪のは「まるい……筒状の 形状の……ビル」でマルビルといいます)の地下で、最近この辺りの地下に 出来た新地下街「ディアモール大阪」(これは結構恥ずかしい名前。まるで 「コモエスタ赤坂」みたいだ)と連絡しているので、僕は地下鉄の駅から そこを経由して行くことが多いですね。

 暗い気持ちで買いに出かけたのは、荒井由実の「コバルト・アワー」だった のですが、またまた違うCDに化けてしまいました。今度は……吉田美奈子の 「Twilight Zone」です。

 吉田美奈子という人は、他の日本人の女性シンガーとは全く違う唱法の人 で、その声はもはやひとつの楽器のような印象さえ持たせます。ここ数年は 旦那さん、十数年来飼っていた猫、そして友人であったイラストレーターの ペーター佐藤氏の死、とたて続けに別離が襲い、そのせいか、ライブなどで 生ピアノの伴奏だけで歌うその歌は刺すような鋭ささえ感じさせますが、 そのような彼女の音楽は、彼女が僕と同じ位の年齢のときに録音されたこの アルバムですでにある完成形を持っているのです。彼女のピアノと歌を核に ほぼ一発録りで録音されたというこのアルバムには(これは今の彼女のアル バムでもそうですが)何のギミックも介在していません。

 時代性とか流行というものは一つの活力で、常に何かしら新しいエネルギー を与えてくれるものですが、こういう彼女のアルバム(この作品から、最新 作の「Extreme Beauty」まで一貫して)を聴くにつけ、それに追従すること にどれだけの意味があるのだろうか、と考えてしまいます。Trendy という タグのついた事物を(周囲から浮かないように)収集することの無意味さを、 そしてそういう行為の対極にあるこういった音楽と出会える自分の幸運さに 感謝してしまいますね……もちろん、流行の事物がいいものであるならば、 下世話にどんどん吸収したらいいと思いますけどね。


Yesterday   Tomorrow    Index


4月21日(日)


 今日は悲しい出来事がありました。このおかげで、昼からずっと心がブルー なままです。

 実はこの何日間か、ずっと無言電話に悩まされ続けてきたのです。留守番電話 にも、何本か名も告げぬ空白の伝言が残され、夜や週末に受話器を手に取ると、 何を問いかけても無言、ということが何度もありました。
 こういう電話をかけてくるような相手に思い当たるのならば、ここでこうして 書くこともないでしょう。けれど、幸か不幸か(?)そういう相手を作る機会に も恵まれないもので、最初は、
「僕の前に今の電話番号を使っていた人宛なのかもしれない」
などと軽く考えていました。

 そして、今朝……またその電話がかかってきたのです。いつものように、こ ちらから呼びかけても無言のままです。
 こういうときに採り得る対策は二つ。説教するか、こちらもだんまりを決め込む か、です。前者が効力を発揮する望みは薄いと思われましたが、効力を発揮しな いということはもう一度向こうが電話をかけてくる、ということだから、まずは (蓄積されたストレス解消も兼ねて)前者をトライすることにしました。

 あなた、暇ですねぇ。何だってわざわざ、男の僕のところなんかに電話をかけて くるんです。せっかくの日曜日だっていうのに……けれど、こんな問いかけにも 相変わらず無言のままです。
 僕は耳を澄ませて、相手の送話器から何事か伝わってこないか注意していま した。しかし相手は手で送話器を押さえているらしく、何の音も聞こえてきません。
 僕は黙って受話器を置きました。どうやら最初の作戦は失敗に終わってしまった ようです。次にかかってくるのが何時なのかは判然としませんが、この様子ではこれ で終わりということはないだろう。そう思っていました。

 午後になり、梅田のタワーレコードに行こうと思って支度をしていると、また 電話のベルが……どうやら相手は、昼食後の腹ごなしにまた電話をかけてきた ようです。
 今度は「作戦弟二号」発動です。僕は電話のオンフックボタンを押しました。 これを押すとスピーカーから音声が出て、ハウリングを防ぐためにこちらの送話 はカットされます。無音声がしばらく続いたら、しびれをきらして何らかの反応を みせるかもしれない。僕はしばし、息をひそめた無言電話嗜好者の気分を味わって いました。
 そして、電話の横のベッドの上で、僕が着替えを済ませ終わろうというそのとき、 スピーカーからごそごそという(おそらくは押さえていた手を放すときの)音がし、 一声、

「もしもし」

そして、はっ、と息を飲むような音が聞こえ(声を発してしまったことにその時 気がついたのでしょう)、電話は切れました。
 でも、それだけで、その声の主が誰なのかはっきり分かったのです。独特の その口調、微かに残る茨城のなまり……先日、7年ぶりに僕に電話してきた、 高校時代の知人の声だったのです。

 正直、彼とはあまり親しい方でもなかったし、同じ部に属していたわけでも なかったのですが、予備校時代によく近くの席に座っていた……そういう知人で した。だから、彼から7年ぶりに電話があったときもびっくりしたけど、今回は それ以上の驚きでした。何よりも、彼が僕にそんな電話をする理由が分からない。

 でも、先日話したときの様子では、彼は故郷にも帰っておらず、友人もあまり いない様子だったし……僕の方はいろいろあったけど、「異国」である大阪に なんとか根を下ろすことが出来ているわけだし……僕には分からない寂しさが あるのかもしれない。そう考えると、情けないやら悲しいやらで……おかげで 今日はブルーに、独りビールをすすっています(結局それか)。


Yesterday   Tomorrow    Index


Diary of Thomas に戻る
Thomas Home Pageに戻る