はじめに

日本語タイプセット環境

このドキュメントは、主に Linux ユーザ(他の UNIX 系 OS のユーザにとっても参考にしていただけるとは思いますが)のための、TeX Live による日本語タイプセット環境を整備するためのガイドです。

「タイプセット」というのは、簡単に言うならば「組版」ということになるでしょうか。文字や画像による情報の体裁を整え、印刷物などに供することができるかたちにすることを、こう言います。おそらく、ここを読まれるほとんどの方が、Microsoft Word に代表される、いわゆる日本語ワードプロセッサを使用して文書を作成されたことがおありと思いますが、ここで言う「タイプセット」というのは、そういう簡易的な文書の作成も含めた文書整形を指す言葉です。

TeX とか LaTeX とかって何よ?

……という疑問をお持ちの方は、ググるなり amazon を漁るなりしてみて下さい。星の数程の文書が存在することが分かるでしょう。この手の質問はそれらの文書を御参照下さい。

上記の質問を疑問としてお持ちで、TeX / LaTeX というものを使ってみたいなー、と思われる方は、とりあえず以下の書籍を購入されるのが一番の早道でしょう:

[改訂第7版]LaTeX2ε美文書作成入門、奥村晴彦・黒木裕介 著、技術評論社 (2017/1/24)、ISBN-13: 978-4774187051
以下、このコンテンツでは、この本が手元にあることを前提として記述を進めていきます……いや、それ位、この本が must item として世に知られているからで、僕が決して横暴としてこういうことを書いているのではありませんので、悪しからず。

TeX とか LaTeX って何が便利なの?

TeX の組版における仕様や精度などに関しては、上の「美文書作成入門」などにも詳しく書かれていると思いますので、ここで改めて書くことはしません。

おそらく、このコンテンツを探してアクセスされている方の多くは、大学生、大学院生、教職員の方、あるいは企業に在籍しているけれど投稿論文等を書く状況にある方……が多いのではないかと思います。そういう方に共通しているのは「論文を書く」あるいは「レポートを書く」ということでしょう。

特に数物系では、論文投稿に TeX / LaTeX は欠かせません。それ以外の場合でも、LaTeX は論文作成に非常に有用なツールです。それは何故かというと、LaTeX は論理構造を記述するかたちで整形を行わせるツールだからです。また、カウンタや簡単なデータベースが実装されていて、章節やページの番号、引用論文リスト等を管理し易く作られています。

そして、論文だけが論理的構造を持つ文章というわけではありません。何か説明するような文章をまとめたり、あるいは小説などの組版を行う場合にも、論理的に文書構造を記述できるというのは強力な武器になります。また、近年の TeX / LaTeX の環境の進歩と無料で使える高品質なフォントの出現に伴い、日本語を含めた組版一般において、TeX / LaTeX は強力なツールとして使えます。

更に、TeX / LaTeX では文書は基本的にテキストファイルとして扱います。ですから、扱うハードウェアやそのハードに入っているソフトウェアにほとんど依存しません。たとえば家や普段持ち歩いている端末で原稿を書き、版組はふんだんにフォントの入っている端末上で行う、ということもできます。

とどめに、ここで紹介する TeX Live もそうですが、TeX / LaTeX のソフトは基本的に無料で使うことができます。金銭的な問題が関係してくる可能性があるのはフォントですが、先程書いたように、無料で使えて印刷に耐える品質のフォント、あるいは macOS におけるバンドルフォントのように、システム付属で印刷に耐える品質のフォントを使うことで、無料で高品質の版組を行うことが可能なのです。

僕は統合環境が大っ嫌いだ!

横暴だと言われるのかもしれませんが、僕はいわゆる統合環境というものを好みません。TeX / LaTeX においても、TeXworks とか TeXShop のような統合環境がありますし、それらを通して TeX / LaTeX を使う人の方が圧倒的多数です。しかし、40年近くに渡ってコンピュータを触っていて、他人に質問されるようになってからも結構な年月が経つ身としては、それらの統合環境を使っている人に警戒する習慣が身についてしまっているのです。

いや、皆が皆そうだとは言いませんけれど、ある一定割合で、エラーメッセージひとつ自分の目で確認しようともせずに stupid な質問……「○○に書いてある通り打ち込んだのに動きません」みたいな……を安易にしてきて、コマンドの打ち間違いとか、事前に指定するべき事項の抜けとか、他人の手を煩わせるまでもないことで貴重な時間を空費させる(ええ空費ですよ、だってその9割以上がコミュニケーションのために消費されて、互いに残るものなんてほとんど何もないんですから)、統合環境を盲信的に使っていて、その結果として問題の切り分けができていない人、というのが存在するからです。

僕は統合環境の利便性を否定する気は毛頭ありません。しかし、教育的見地からすると、上述のような「盲信」の弊害を否定できないのです。ですからここでも、そういう統合環境に関してはこれ以上言及しませんし、そういう環境を使うことをお薦めもしません。使い慣れたテキストエディタ(僕の場合は GNU Emacs と vim ですが、まあこれは人によって色々あるんでしょうし、そういう道具に関しては尊重されるべきでしょう)と、xterm とか Terminal.app を通して shell (僕は bash ユーザなので、もしも tcsh 等を使われている方は適宜読み換えて下さい)を使うことを前提として、話を進めることにします。

また、同様の理由から MacTeX に関しても解説しません。MacTeX は TeX Live 準拠と言われていますから、参考にはなるかもしれませんが、齟齬がある場合はあくまで自己責任ということでご了承下さい。

TeX Live ベースの拡張環境に関して

既存の TeX Live に対して、ソースレベルでパッチを当てたり、追加のパッケージを導入したりすることで、充実した日本語環境を構築しようとする試みがあります。これらは、将来的に TeX Live の本流にマージされる可能性が高く、TeX Live の日本語環境を充実させる上で欠かせない存在です。

歴史的経緯等に関しては、後程簡単に書くつもりです。


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