tlptexlive

過渡的な状況に関して

ここで言及している tlptexlive の内容は、ほとんどが本流の TeX Live 2013 にマージされています。現状では、xdvi と metapost を日本語化したものが tlptexlive で供給されていますが、これも将来的にどうなるかは分かりません。あくまで過渡的な状況の中でこれを書いている、ということを強調しておきたいと思います。

TeX Live に足りないもの

ptex / platex や OTF パッケージ、babel の japanese パッケージ、そして uptex / uplatex がマージされた現在、TeX Live 2013 は、そのままでも日本語処理に関してはほぼ問題なく適用することができます。フォントの問題も、このコンテンツで紹介しているような方法で、個々の環境に合わせて問題なく改善することができるはずです。

しかし、この状況になるまでには、主に ptexlive や TeX Live 2011 への追加日本語パッチにおける様々な改善が必要でした。また、現状に至ってもなお、日本語処理システムとしての TeX Live に問題が皆無だというわけではありません。

ptex, eptex, そして uptex

TeX / LaTeX の日本語拡張として現在本流になっているのは、アスキーで開発された pTeX / pLaTeX です。現在は、内部レジスタを拡張した eptex がひろく使われていて、TeX Live 2011 では当初よりこの eptex が収録されていました。

ttk 氏が開発した uptex も、 TeX Live 2012 から収録されています。uptex は内部処理を Unicode 化した TeX で、日本語のみならず、いわゆる CJK (Chinese, Japanese and Korean) の言語環境において大きな恩恵を齎すもので、今後の発展が大いに期待される存在です。

ユーティリティ

TeX Live に収録されたユーティリティの中には、未だ日本語に対応していないものがいくつかあります。特にこの中でも、DVI ファイルのビューアである xdvi と、簡単に EPS ファイルが出力できる MetaPost に関しては、日本語化を求める声が高かったものです。

tlptexlive の仕組み

では、tlptexlive ではこれらをどのように供給しているのでしょうか。

tlptexlive では、tlmgr の新しい機能を利用して、日本語化・拡張されたバイナリを供給しています。

複数のリポジトリの登録

先にも書いたように、tlmgr は "option repository <URL>" でリポジトリを登録することができますが、"repository add" オプションを使用することで、複数のリポジトリの URL を指定することができます。これを用いて、tlptexlive の導入・管理を行います。

pinning.txt

複数のリポジトリが登録された場合、あるパッケージが2つ以上のリポジトリ上に存在する、ということが起こり得ます。この場合、基本的には version number でインストールが管理されるわけですが、ある特定のパッケージは、常にある特定のリポジトリから取得・インストールしたい(今回の場合がまさにそれです)、という状況があるわけです。

新しい tlmgr は pinning.txt というファイルによって、この問題に対する設定を行うことができます。

導入方法

tlptexlive の導入方法は、配布元の pukiwikiに詳しく書かれていますが、一応ここにも書いておきます。

まず、

$ sudo tlmgr update --self --all
として、その時点での最新の TeX Live のパッケージと tlmgr がインストールされた状態で、
$ sudo tlmgr repository add http://www.tug.org/~preining/tlptexlive/ tlptexlive
このように、TeX Live 2013 のリポジトリに加えて、www.tug.org 上の Preining 氏のユーザスペース上にあるリポジトリを登録しておきます。

次に、pinning.txt を作成します。まず、

$ sudo mkdir /usr/local/texlive/texmf-local/tlpkg
のようにディレクトリを作成してから、この中に pinning.txt の名前で以下の内容のテキストファイルを作成します。
tlptexlive:*
これで、tlptexlive のインストールの準備は整いました。後は、
$ sudo tlmgr install pxdvi pmetapost
で、日本語化された xdvi と metapost が導入されます。

この作業が終わった後も、定期的に、

$ sudo tlmgr update --all
とすることで、TeX Live 2013 と tlptexlive の双方のアップデート作業が問題なく行なわれます。


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