「ねぇ、何か買ってよ」

知り合いの中学生の子供がいる。野球部に所属しているそうなのだが、僕に会う度に、

「ねぇ、何か買って」

と言う。僕が色良い返事をしないでいると、

「あのさあ、俺、昨日試合があったんだけど」
「ほお。で、どうした」
「俺、先発で、コールドだったけど、完封勝利」
「それはよくやったなあ」
「でしょう?だから、何か買ってよ」

とうとう、僕の堪忍袋の緒が切れた。

「あのなあ、君は、野球頑張ってるんだろ?」
「そうだよ」
「だったらさ、その頑張った結果をどうしてそんなに安売りするんだ?」
「安売りって?」
「君は努力してその結果を得たんだろ。その努力は誰の為の努力だ?」
「俺の為」
「自分の為に努力して勝ち得たものを、君は平気でモノと引き換えにするのか」
「……」
「努力して勝ち得たものなら、どうしてもっと大事にできないんだ。それに俺だって、他人の努力だか努力じゃないんだか分からないものに、ホイホイ金やモノを出すようなお気軽な奴だと思われたかぁないよ」
「……」
「本当に、努力してそれを勝ち得たなら、それにはもっと誇りを持て。安売りするな!」
「……じゃあ、もういいよ」

哀しいなあ。どうしてこの子はこんなことも分からないんだろうか。それでは高みに至るなど夢のまた夢。ああそうか、そうしておけば、うまくいかなかったときの言い訳になる、ってか。哀しいなあ。

2013/08/22(Thu) 00:55:06 | 日記
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T.T.Ueda
Tamotsu Thomas UEDA

茨城県水戸市生まれ。

横山大観がかつて学んだ小学校から、旧水戸城址にある中学、高校と進学。この頃から音楽を趣味とするようになる。大学は、学部→修士→博士の各課程に在籍し、某省傘下の研究所に就職、その2ヵ月後に学位を授与される(こういう経緯ですが最終学歴は博士課程「修了」です)。職場の隣の小学校で起こった惨劇は未だに心に深く傷を残している。

その後某自動車関連会社の研究法人で国の研究プロジェクトに参画、プロジェクト終了後は数年の彷徨を経て、某所で教育関連業務に従事。

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