ヤリ逃げたい中国

先週までの中国は、漁船船長が解放された後も、ただただ態度を硬化させていた。船長の身柄を返した後、日本は「謝罪と賠償」のカタに、フジタの日本人社員4名とレアアースの輸出停止(中国側はそのようなことはしていないと言っているけれど)、そして対日輸出品の手続厳重化による実質的な輸出制限……と、これだけを握られた状態だったわけだ。

この状況は現在も尚基本的には変わってはいない。しかし、今週に入ってから、奇妙なことに、中国側の態度が軟化しつつある。

関係改善へ日本の出方待つ=事件後「対日重視」に初言及−中国(時事ドットコム, 2010/09/28-19:04)

【北京時事】中国外務省の姜瑜・副報道局長は28日の定例会見で、尖閣諸島(中国名・釣魚島)沖での漁船衝突事件をめぐり、「中日関係を重視する」とした上で「関係の安定と発展には日本の誠実かつ具体的な行動が必要だ」と述べ、菅政権の対応を待つ姿勢を強調した。

中国が「対日関係重視」に言及したのは事件後初めてで、日本の出方次第で関係改善を図りたい意向を示した形だ。ただ日本側が模索しているアジア欧州会議(ASEM)での日中首脳会談に関し、「情報はない」とコメントし、現時点では消極的な姿勢を崩さなかった。

姜副局長は、日本政府が中国側の謝罪・賠償要求を拒否し、損傷を受けた海上保安庁巡視船の原状回復を求めたことについて「日本側は巡視船が中国の領海で漁船に損害を与えており、相応の責任を負うべきだ」と改めて主張。対抗措置の解除についても、「中日関係に与えたマイナス影響を取り除き、関係修復に向け努力すべきだ」と指摘した。

また中国が尖閣諸島近海で漁業監視船によるパトロールを常態化すると伝えられていることは「法に基づく漁業管理活動で、漁民の生命を守るためだ」と否定せず、日本側に追跡行動などの停止を求めた。

このほか、河北省での邦人4人拘束事件と漁船衝突事件は「完全に性質が違う」と強調。「法に基づき公正に処理されるはずだ」と述べるにとどめた。

この日、別に会見した傅瑩外務次官は日中首脳会談について「時間が限られており、2国間会談の機会は極めて少ない」と述べ、実現の可能性が低いとの見通しを示した。

レアアース輸出、再開へ=対日関係修復の姿勢か−中国(時事ドットコム, 2010/09/29-12:32)

【北京時事】尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件後、日本がその需要の9割超を中国に依存するレアアース(希土類)の対日輸出が事実上ストップしていた問題で、中国当局の通関手続きが再び動きだしたことが29日分かった。複数の日系商社や貿易筋が明らかにした。

関係者によると、中国商務省当局者が28日、一部日系企業に対して口頭で、通関手続きを速める意向を伝えたもよう。また、事件後に日系企業とのレアアース取引を自粛していた中国企業が、姿勢を改めたとの情報もある。

日本が漁船船長を釈放した後も、賠償や謝罪を要求する中国政府の姿勢に対しては、日本国内で反発が強まっているほか、国際社会も懸念を強めている。こうした状況が続けば、発展を続ける中国経済自身にも影響が及ぶ恐れがあり、関係修復に動きだした可能性がある。

一方、大畠章宏経済産業相は29日午前、取材に対し「経産省にはきちんとした形で(輸出再開の)情報は入っていない。確認を急ぎたい」と述べた。

また、中国税関当局が一部で日本の輸出入品に対する通関検査を厳格化し、荷動きが滞っている問題では、「27日ごろから検査が徐々に緩和されている」(航空貨物大手)、「状況は基本的に変わっていない」(物流大手)など、さまざまな情報が流れている。「上海では航空、海運いずれの手続きも正常化したが、青島では全量検査を実施するとのうわさもある」(同)との話もあり、現地の日系企業は情報収集に追われている。

中国漁船・尖閣領海内接触:中国、軟化に含み 「ほぼ終了」と高官(毎日 jp, 毎日新聞 2010年9月29日 東京朝刊)

【北京・浦松丈二】沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)の衝突事件について、中国政府高官は28日、毎日新聞など一部メディアに対して「ほぼ終わった」と述べ、関係修復に向けて日本側から行動するよう求めた。訪日旅行自粛など事実上の対抗措置の解除にも含みを持たせた。中国側の軟化姿勢として注目される。

中国側は船長が処分保留で釈放された直後に謝罪と賠償を要求して日本側の困惑と反発を招いていた。同高官の発言は、事件終結の見通しを示すことで、日本側に冷静な対応と歩み寄りを促す思惑がありそうだ。

同高官は中国政府が事件後打ち出した訪日ツアーの販売自粛要請について、中国では10月1日から建国記念日の7連休に入ることを指摘し「多くの人々は(日本などに)旅行したいと思っている」と述べ、近日中の自粛要請の解除に含みを持たせた。

10月4、5の両日、ブリュッセルで開かれるアジア欧州会議(ASEM)を機にした菅直人首相と温家宝首相の会談については「時間が非常に限られている」と見送りの見通しを示したが、関係修復に向けた接触を拒否したわけではないと強調した。

しかし、中国河北省石家荘市で建設会社「フジタ」の社員ら4人が軍事管理区域に侵入した疑いなどで取り調べられている問題は、担当外であることを理由に「よく分からない」と述べ、釈放時期の見通しは示さなかった。

一方、中国外務省の姜瑜副報道局長は、28日の定例会見で「中国側は中日関係を重視している。日本が誠実かつ実務的な行動を取ることで、中日関係を安定的に発展させることができる」と述べ、従来より踏み込んで関係修復への期待を示した。

これらの記事から中国側の意図を考えると、大体こういうところだろう:中国としては、日本の検察が、公訴も公訴以前の処分もすることなしに船長を送り返した、という事実は、今回漁船が捕獲されたエリアでの今後の中国の活動に対して、今後日本が黙認せざるを得ない、という理解をすればよい。今回の件で日本側の謝罪と賠償を引き出せれば、これはダメ押しができる。引き出せなくとも、中国に配慮した日本の行動、というものが、(現時点で中国が日本にかけている圧力の下で)日本側から自発的に出てくれば、これでメンツも保たれて言うことはない……こんなところだろうか。

自分で書いていても厭な気分になってくる、何とも手前勝手な話だが、彼らは二つの理由から、ここで態度を軟化せざるを得なかった。その理由は、ひとつは、これ以上圧力をかけると、日本が例の漁船を撮影した映像を公開し、ひろく世界に中国の暴力性を主張するのではないか、という懸念からである。もう一つは、この脅威から、ASEAN 諸国が連携して、他国の領土・領海を圧力で侵す国として中国を糾弾するのではないかという懸念からである。

態度を軟化した、といっても、別に中国という国家がソフトになったということではない。中国は、ただただ日本がビデオを公開することを恐れているのである。現時点で日本がビデオを公開して、慌てて中国が(捏造するということになるのだろうけれど)反証となるようなビデオを公開したとしても、世界は中国のビデオを信用してはくれないだろう。そういう意味で、中国は映像による論証という点においては、かなり日本より不利な立場にある。

ここを突かれた場合、先の懸念…… ASEAN 諸国 vs. 中国、という図式が定着するおそれが非常に高くなる。折しも来月上旬にブリュッセルで行われるアジア欧州会議 (ASEM) において、中国はネガティブキャンペーンの標的にされる可能性すらあるわけだ。だから、いかにして日本がビデオを公開するのか、というのが、次の一手としては非常に重要なものになることは想像に難くない。

中国の目下の望みは、尖閣諸島周辺での行動の自由を有耶無耶のうちに拡大して、後はヤリ逃げることなのだろう。しかし、ASEM 等で恥をかかされるような状況となれば、中国は更に日本に圧力をかけようとしてくる可能性がある。日本は、逆に ASEM を利用して、欧州各国と EU 外交部に対して、今回の事態がいかに理不尽なものであるのか、を効果的に主張できるかどうか……これによって、今後の展開は相当違ったものになるだろう。果たして日本は、どうするつもりなのだろうか。

なんでも、民主党の細野豪志議員が、菅直人の親書(首脳級の会談をもつよう促す内容と言われている)を持って緊急訪中した、というニュースが流れている。皆さん、細野豪志って名前、聞いたことありませんか?ほら、あれですよ。山本モナと路上でキスしてた、あの議員ですよ。しかもですね、菅直人は今夕のインタビューに対して「そんな話は初めて聞いた」とそらっとぼけているそうですよ。こんな状態ではお話にならない。せいぜいフジタの4人と引換えに、今度は謝罪と賠償を受け入れるか、竹島のように尖閣諸島周囲に日中両国の漁業区域でも設定させられるかが関の山だろう。ちなみに、竹島周囲の漁業区域は日韓両国が操業できる、ということになっているはずなのに、実際には韓国が独占的に操業している状態である。これではヤリ逃げどころか、ヤリたい放題になってしまうではないか。

2010/09/29(Wed) 14:25:15 | 社会・政治
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Profile

T.T.Ueda
Tamotsu Thomas UEDA

茨城県水戸市生まれ。

横山大観がかつて学んだ小学校から、旧水戸城址にある中学、高校と進学。この頃から音楽を趣味とするようになる。大学は、学部→修士→博士の各課程に在籍し、某省傘下の研究所に就職、その2ヵ月後に学位を授与される(こういう経緯ですが最終学歴は博士課程「修了」です)。職場の隣の小学校で起こった惨劇は未だに心に深く傷を残している。

その後某自動車関連会社の研究法人で国の研究プロジェクトに参画、プロジェクト終了後は数年の彷徨を経て、某所で教育関連業務に従事。

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