内部告発者の罪とは

尖閣諸島沖における中国漁船の問題で、ビデオ画像を公開したのが誰なのか、目下犯人探しが進んでいるようである。正直言って、刑事事件としても処分保留・被疑者釈放となってしまった事件の証拠物件に対して、公開がそれ程の問題になるとも思えないし、そう扱うべきでもない、とは思うのだが、一時期とは言え国家公務員であった僕としては、どうしても気になる問題がある。

国家公務員法という法律がある。この国家公務員法、通称公務員法で、公務員の守秘義務が以下のように規定されている:

(秘密を守る義務)
第百条  職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。
○2  法令による証人、鑑定人等となり、職務上の秘密に属する事項を発表するには、所轄庁の長(退職者については、その退職した官職又はこれに相当する官職の所轄庁の長)の許可を要する。
○3  前項の許可は、法律又は政令の定める条件及び手続に係る場合を除いては、これを拒むことができない。
○4  前三項の規定は、人事院で扱われる調査又は審理の際人事院から求められる情報に関しては、これを適用しない。何人も、人事院の権限によつて行われる調査又は審理に際して、秘密の又は公表を制限された情報を陳述し又は証言することを人事院から求められた場合には、何人からも許可を受ける必要がない。人事院が正式に要求した情報について、人事院に対して、陳述及び証言を行わなかつた者は、この法律の罰則の適用を受けなければならない。
○5  前項の規定は、第十八条の四の規定により権限の委任を受けた再就職等監視委員会が行う調査について準用する。この場合において、同項中「人事院」とあるのは「再就職等監視委員会」と、「調査又は審理」とあるのは「調査」と読み替えるものとする。

で、これに違反するとどうなるか、だけど、これも国家公務員法に規定があって、

     第二款 懲戒

(懲戒の場合)
第八十二条  職員が、次の各号のいずれかに該当する場合においては、これに対し懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。
一  この法律若しくは国家公務員倫理法 又はこれらの法律に基づく命令(国家公務員倫理法第五条第三項 の規定に基づく訓令及び同条第四項 の規定に基づく規則を含む。)に違反した場合
   第四章 罰則

第百九条  次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(中略)
十二  第百条第一項若しくは第二項又は第百六条の十二第一項の規定に違反して秘密を漏らした者
ということで、今回の画像公開が内部告発によるものである場合には、国家公務員法の規定からみると、まず「免職、停職、減給又は戒告の処分」が適用され、その上で「一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金」という罰則が適用される可能性が大きい。まあ、ああいう告発をするからには、おそらくは職を賭して行ったのだろうと思うけれど、もし告発者が同定されたら、内部告発者の保護という観点からも、弁護士会辺りに大弁護団を作っていただきたいものである。おそらく国民は皆、そうあってほしいと思っているだろうから。

2010/11/07(Sun) 18:38:06 | 社会・政治
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Profile

T.T.Ueda
Tamotsu Thomas UEDA

茨城県水戸市生まれ。

横山大観がかつて学んだ小学校から、旧水戸城址にある中学、高校と進学。この頃から音楽を趣味とするようになる。大学は、学部→修士→博士の各課程に在籍し、某省傘下の研究所に就職、その2ヵ月後に学位を授与される(こういう経緯ですが最終学歴は博士課程「修了」です)。職場の隣の小学校で起こった惨劇は未だに心に深く傷を残している。

その後某自動車関連会社の研究法人で国の研究プロジェクトに参画、プロジェクト終了後は数年の彷徨を経て、某所で教育関連業務に従事。

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