dvipdfmx 「ずれ」問題・現状のまとめ

生暖かい目で傍観しているつもりが、気がついたら話の中にいることになったのは何ともはや、という気もするんだが、これは前からちょっと気にはなっていたことなので、この機会にまとめておくことにする。

僕は TeX で縦書きの文書を整形することがしばしばある。これは主には青空文庫に収録されている文章、あるいは書籍で出ている文章で私家版として PDF を作成したいと思ったものを、TeX で縦書き・ルビ付きの文書に整形する、ということがほとんどなのだけど、この際に困った問題が発生していた。僕の家では Mac で出力することが時々あるのだけど、platex + dvipdfmx で出力した PDF を Acrobat 経由で出力させると、ルビがずれるのである。具体例に関しては後程提示するが、これのおかげで、家で出力することを一時期諦めていたことさえあったのだ。

もっとも、これの回避方法は比較的単純で、PDF を PS に変換して、プレビューで出力すれば問題なく印刷に供することができた。その後、短い document を扱う際に luajitlatex + luatex-ja を用いることでも、この問題は容易に回避可能であることが分かって、この問題に関してあまりつきつめて考えてはいなかったのだが、例の騒ぎもあったことだし、ちゃんと状況のチェックだけはしておこうか、と、昨夜の時間を使ってごそごそやっていたわけだ。以下、その内容に関して記すことにする。

まず、今回使用した document を示す:

前者を platex で処理して DVI ファイルを作成した後、条件を変えて PDF を作成した。後者は luajitlatex で処理して直接 PDF を作成したわけだが、これも条件をふたつ設定してある。尚、PDF 作成は手元の Linux 端末(Debian GNU/Linux sid + texlive 2016)で行っている。

結果を以下に示す:

これを、自宅の Mac 上の Acrobat (CS3 収録のもの)から、Brother DCPL2540DW (A4 サイズのモノクロ LED プリンタ)で紙面に出力した結果を以下に示す:

……と、platex + dvipdfmx で処理したものはいずれもルビがずれている。luajitlatex + luatex-ja で処理したものはいずれもずれない。luatex-ja でフォント指定しなかったものは、そもそも横書きのグリフのままなのであまり比較の意味はないのだけど、一応提示しておいた。まあこんな感じなんだよなあ。

dvipdfmx 論争

何やら TeX Wikiちょいとキナ臭い論議になっている模様。うーむ。

僕も印刷業界の人ではないので何とも言えないんだが、少なくとも現段階で platex + dvipdfmx が LuaTeX + luatex-ja に完全置換され得るのか、と言われたら、それは no だと思う。機能的には後者は本当に充実してきていると思うけれど、特に大きな文書を扱う際の速度が全然違う。数百ページの文書なんて、この印刷業界じゃない僕ですらザラに扱うわけだから、やはり必要なのは必要だろう。

dvipdfmx が吐いた PDF で問題が生じたのは……ああ、2p になるように変換したら、Mac 上での扱いでフォントの割付けがおかしくなったことがあったような。このときは PS に変換してから Mac 上のプレビューを使って印刷したりしてたような記憶があるんだが、今はそういうこともしていないので何とも言えない。ただ、不具合があるならまず例を示して報告すべきだし、エラい人がこう言ってるから、というあの修正者の論調もちょっと受け入れ難いものを感じるわけだ。

それにつけても、こういうときに気になるのが……ああいう「こき下し的修正」に血道を上げる人ってのは、TeX を使ってどんな output を出しているのか、という話ね。もしくは、この道具がダメダメだ、と言っていて、商用ソフトを使う以外の代替策を提示しないというのはどうなんだろう、という話ね。まあ、僕はそういうことにかかずらあっている暇がないんで、生暖かく傍観しておくことにするけれど。

texlive 無間地獄

そのきっかけは、一昨日か昨日辺りから、texlive pretest 版のアップデートがうまくいかなくなっていたことだった。少し待っていればよかったものを、余計なことを考えてしまったのだった。これはクリーンインストールした方がいいかなあ、などと……

本来、pretest 版であっても、texlive のクリーンインストールは容易である。install-tl-unx.tar.gz を取得して展開、install-tl にオプションで供給元の URL を渡してネットワークインストールを行うだけのことである。しかし、ファイルサイズのデータベースの更新がまだなのか、ファイルサイズが違うといって落ちてしまう。やっべー。/usr/local/texlive/2016 をもう消しちゃってるのに……しかもこんなときに限ってプレゼンの資料を beamer で作ったりしていたから、さあ困った、というわけだ。

では次善の策として、texlive 2015 をインストールしよう……と、DVD ISO イメージを落としてきてインストール、アップデートを済ませてから、試みに今作っているドキュメントを処理しようとしたら……なになに、

! Package pgf Error: Driver file ``pgfsys-luatex.def'' not found..
えーーーー?

このプレゼン資料は、LuaTeX-ja と beamer を併用して書いていたわけだが……落ち着け俺。そう言えば、LuaTeX が大規模な仕様変更をしていたんじゃなかったっけ、とググってみると、アセトアミノフェン氏の blog における記述を発見。あーやっぱり。ということは、もはや texlive 2015 では駄目だということか……というところまで確認して時計を見ると、もう午前2時を過ぎている。サーバも何かおかしいし、とりあえず時間を置いた方が良かろう、ということで寝てしまったのだった。

起床後、改めて各ミラーサイトからのネットワークインストールを試みる。いけそうなのに途中で落ちてしまう、ということが何度かあった後に、Harvey Mudd College のサーバ(現存するミラーサイトの中で、家から最速で接続できるサーバでもあるわけだが)でようやく成功。まだアップデートが怪しいんだが、とりあえずの使用には問題なしの状態まで復帰させた。あとは…… luajitlatex を使用可能にしておく位か。はー。

しかし精神衛生上実によろしくないわ。たまらんなあ。いや、勿論これは自業自得なんだけどね。

あれれ、SKK Openlab に接続できない

この blog に、SKK 絡みの話を書こうとして、ふと:
http://openlab.ring.gr.jp/skk/
に接続しようとしたら、接続できません……うーむ、これはどういうことかしらん。

第一に、僕は最近の Ring Server Project の状況がどうなっているのか、あまりちゃんとチェックしていないわけだ。そしてそれ以前の話として、SKK を作られた佐藤氏は、もう16年も前に SKK の開発を終了しているわけだ。だから、いつ何時 SKK が顧みられない状況になったとしてもおかしくない、とも思えるわけで。

うーむ。今更 Google 日本語入力とか使えませんよワタクシ。これが単なるサーバメンテナンスとかであってほしいんですが……

Profile

T.T.Ueda
Tamotsu Thomas UEDA

茨城県水戸市生まれ。

横山大観がかつて学んだ小学校から、旧水戸城址にある中学、高校と進学。この頃から音楽を趣味とするようになる。大学は、学部→修士→博士の各課程に在籍し、某省傘下の研究所に就職、その2ヵ月後に学位を授与される(こういう経緯ですが最終学歴は博士課程「修了」です)。職場の隣の小学校で起こった惨劇は未だに心に深く傷を残している。

その後某自動車関連会社の研究法人で国の研究プロジェクトに参画、プロジェクト終了後は数年の彷徨を経て、某所で教育関連業務に従事。

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