dvipdfmx 「ずれ」問題・原因は Acrobat にあり

この件に関しては解決した。アセトアミノフェン氏から貰った情報をもとに、Adobe の出している情報「レーザープリンタへ印刷すると縦書きの文字にずれが生じる(Illustrator CS3/InDesign CS3/Acrobat 8)」を読んでいると、対処策の最後にこんな気になる記述があるではないか。

D.Acrobat Distiller の「CMap」フォルダに保存されている「90pv-RKSJ-V」ファイルを、Acrobat 8 の「CMap」フォルダにコピーします。
  1. Finder で以下のフォルダへ移動します。

    Macintosh HD/アプリケーション/Adobe Acrobat 8 <エディション名>

  2. Control キーを押しながら「Acrobat Distiller」アプリケーションアイコンをクリックし、[パッケージの内容を表示] を選択します。
  3. 以下のフォルダを開きます。

    Contents/MacOS/Data/psdisk/Resource/CMap

  4. 「CMap」フォルダ内にある「90pv-RKSJ-V」ファイルを選択し、[編集] メニューから ["90pv-RKSJ-V"をコピー] を選択します。
  5. Finder で以下のフォルダへ移動します。

    Macintosh HD/アプリケーション/Adobe Acrobat 8 <エディション名>

  6. Control キーを押しながら「Adobe Acrobat <エディション名>」アプリケーションアイコンをクリックし、[パッケージの内容を表示] を選択します。
  7. 以下のフォルダを開きます。

    Contents/MacOS/Resource/CMap

  8. [編集] メニューから [項目をペースト] を選択します。
……ってことは、え、マジ?

首をひねりながら Acrobat 8 の Resource 辺りをごそごそやって、CMap をチェックしたところが……え? 90pv-RKSJ-V がおかしい、どころじゃない。90pv-RKSJ-V が入ってないじゃないですか。

まさに驚愕の事実である。とりあえず Distiller のインストールディレクトリから探してきて、CMap のディレクトリにコピーしてみると……直った。あっさり。何やねんこれ。いや、こういうことの修正を行うためのアップデートサービスじゃないの。これはユーザーサイドでやらなきゃならないの?しかも対処策の一番最後にこっそり書いてあるって、何なんだ一体。

かくして、問題は解決しました。いや、お騒がせしました。しかし Adobe のせいだとは、少しは疑っていましたが、まさか本当にそうだとはねえ。

dvipdfmx 「ずれ」問題・現状のまとめ

生暖かい目で傍観しているつもりが、気がついたら話の中にいることになったのは何ともはや、という気もするんだが、これは前からちょっと気にはなっていたことなので、この機会にまとめておくことにする。

僕は TeX で縦書きの文書を整形することがしばしばある。これは主には青空文庫に収録されている文章、あるいは書籍で出ている文章で私家版として PDF を作成したいと思ったものを、TeX で縦書き・ルビ付きの文書に整形する、ということがほとんどなのだけど、この際に困った問題が発生していた。僕の家では Mac で出力することが時々あるのだけど、platex + dvipdfmx で出力した PDF を Acrobat 経由で出力させると、ルビがずれるのである。具体例に関しては後程提示するが、これのおかげで、家で出力することを一時期諦めていたことさえあったのだ。

もっとも、これの回避方法は比較的単純で、PDF を PS に変換して、プレビューで出力すれば問題なく印刷に供することができた。その後、短い document を扱う際に luajitlatex + luatex-ja を用いることでも、この問題は容易に回避可能であることが分かって、この問題に関してあまりつきつめて考えてはいなかったのだが、例の騒ぎもあったことだし、ちゃんと状況のチェックだけはしておこうか、と、昨夜の時間を使ってごそごそやっていたわけだ。以下、その内容に関して記すことにする。

まず、今回使用した document を示す:

前者を platex で処理して DVI ファイルを作成した後、条件を変えて PDF を作成した。後者は luajitlatex で処理して直接 PDF を作成したわけだが、これも条件をふたつ設定してある。尚、PDF 作成は手元の Linux 端末(Debian GNU/Linux sid + texlive 2016)で行っている。

結果を以下に示す:

これを、自宅の Mac 上の Acrobat (CS3 収録のもの)から、Brother DCPL2540DW (A4 サイズのモノクロ LED プリンタ)で紙面に出力した結果を以下に示す:

……と、platex + dvipdfmx で処理したものはいずれもルビがずれている。luajitlatex + luatex-ja で処理したものはいずれもずれない。luatex-ja でフォント指定しなかったものは、そもそも横書きのグリフのままなのであまり比較の意味はないのだけど、一応提示しておいた。まあこんな感じなんだよなあ。

dvipdfmx 論争

何やら TeX Wikiちょいとキナ臭い論議になっている模様。うーむ。

僕も印刷業界の人ではないので何とも言えないんだが、少なくとも現段階で platex + dvipdfmx が LuaTeX + luatex-ja に完全置換され得るのか、と言われたら、それは no だと思う。機能的には後者は本当に充実してきていると思うけれど、特に大きな文書を扱う際の速度が全然違う。数百ページの文書なんて、この印刷業界じゃない僕ですらザラに扱うわけだから、やはり必要なのは必要だろう。

dvipdfmx が吐いた PDF で問題が生じたのは……ああ、2p になるように変換したら、Mac 上での扱いでフォントの割付けがおかしくなったことがあったような。このときは PS に変換してから Mac 上のプレビューを使って印刷したりしてたような記憶があるんだが、今はそういうこともしていないので何とも言えない。ただ、不具合があるならまず例を示して報告すべきだし、エラい人がこう言ってるから、というあの修正者の論調もちょっと受け入れ難いものを感じるわけだ。

それにつけても、こういうときに気になるのが……ああいう「こき下し的修正」に血道を上げる人ってのは、TeX を使ってどんな output を出しているのか、という話ね。もしくは、この道具がダメダメだ、と言っていて、商用ソフトを使う以外の代替策を提示しないというのはどうなんだろう、という話ね。まあ、僕はそういうことにかかずらあっている暇がないんで、生暖かく傍観しておくことにするけれど。

Profile

T.T.Ueda
Tamotsu Thomas UEDA

茨城県水戸市生まれ。

横山大観がかつて学んだ小学校から、旧水戸城址にある中学、高校と進学。この頃から音楽を趣味とするようになる。大学は、学部→修士→博士の各課程に在籍し、某省傘下の研究所に就職、その2ヵ月後に学位を授与される(こういう経緯ですが最終学歴は博士課程「修了」です)。職場の隣の小学校で起こった惨劇は未だに心に深く傷を残している。

その後某自動車関連会社の研究法人で国の研究プロジェクトに参画、プロジェクト終了後は数年の彷徨を経て、某所で教育関連業務に従事。

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